[ さいたま新都心(2006年):高層ビルが立ち並ぶ ]
2000(H12)年5月にさいたま新都心の街びらき記念式典が行われました。
さいたま新都心は、東京への一極集中を是正し多極分散型国土を構築する四全総(S62.6.30閣議決定)の一環として、省庁の出先機関の移転先になるとともに、浦和・大宮業務核都市の拠点づくりを目的に事業がスタートしました。
基盤整備は当時の都市整備公団による土地区画整理事業で進められ、区域は1984(S59)年に機能廃止した旧国鉄大宮操車場跡地と片倉工業の工場(昔は製糸場があった)の跡地を含めた約47.4ヘクタールです。
大宮操車場跡地は県や国が購入し、さいたまスーパーアリーナや国の合同庁舎が建てらました。
[ 自由通路(2006年):新都心駅とけやき広場を結ぶ ]
地区内の道路をはじめとする公共施設は、すべてゼロから造り上げられたこともあり、歩道は建物の2階部分の歩行者デッキで連結され、自動車交通から分離されています。
また、バス・タクシーが停留する駅前広場は歩行者デッキの下にコンパクトに収められています。
駅を出てバスやタクシーが停車している駅前広場を迂回しなければ目的地にたどり着けない、これまでの車優先の駅前とは趣が違っています。
さいたま新都心は省庁出先機関の移転先地でもあるため、重厚で安定感があり近寄りがたい雰囲気を醸し出す、いかにも役所らしい建物が多く、そのほか少々奇抜なデザインの郵政関係の建物が建っています。
民間の建物は、大きなガラスと白色、銀色の外壁が多用されたものがほとんどで、明るく軽快な印象が強く感じられます。
[ 上から見たアリーナ(2006年):巨大さがわかる ]
これらの建物の中でも、ひときわ目立つのが「さいたまスーパーアリーナ」です。
最近ではバレーボールやバスケットボールなどのスポーツやコンサート、展示会など多くのイベントに利用されています。
提案競技により選考されたこの建物は、MAS・2000共同設計室(代表:日建設計)が設計し、建築面積が4万4千㎡、延べ床面積は13万2千㎡を超え、高さは66mもある巨大な建造物です。
内部は台車に支持された約15,000トンの客席が最大70m移動することにより、コンサート、展示場、アメリカンフットボールなど多種多様な利用形態に対応できる構造となっています。
また、外観は扇状の屋根が新都心を包み込むように配置され、閉鎖的イメージとならないように正面はガラスが多用され、軽快で透明感を持たせるデザインとなっています。
[ 新都心駅から見る(2006年):この風景はもう見られない ]
[ 新都心駅から見る(2017年):ホテルで視界が遮られた ]
提案競技で使われた模型や完成予想パースであれば、スーパーアリーナ全体を見ることができます。
しかし、現実にはけやきひろばのケヤキや民間ビルが建っているため、500億円の大金をかけて造られたにもかかわらず、その外観すべてを見ることはできません。
建物単体としては、設計者が熟慮を重ねて色々と配慮したのでしょうが、区画整理で造られた敷地にはめ込み、周辺の建物が立ち上がった時のことまでは想定していないようです。
[ コロセウムの鳥瞰図:周囲に広い道路と空間 ]
ローマのコロセウムのように、周囲に道路など広い空間が設けられた敷地であれば、スーパーアリーナはさいたま新都心のシンボルとして全周囲から見ることができたはずです。
駅前で地価の高いところだけに、敷地に余裕はなく建ぺい率は97%と高いので、敷地内で空間を確保するのは高望みとしても、せめて自慢の歩行者デッキからスーパーアリーナのファサードを見渡せるような工夫があっても良かったのではないでしょうか。
周囲の建物が増えるにつれて、スーパーアリーナ全体を眺望できる場所は減少し、ビルの谷間から部分的にしか見ることができません。
さいたま新都心は鉄道の西側に官公庁、民間オフィス、さいたまスーパーアリーナ、東側は大型ショッピングモールなどの商業施設が立地しています。
西側はにぎわいが少ないことを予想してか、けやきひろばなど賑わいを創り出すための施設が造られましたが、残念ながらイベント開催時には『混雑』は感じられるものの、街の『にぎわい』を感じることは稀です。
平日の夜ともなると閑散としたもので、けやきひろばを通るのは帰宅を急ぐ人りばかりです。
『にぎわい』はつくり出すものではなく、自然とわき上がってくるものなのかもしれません。
[ さいたま赤十字病院とアリーナ(2017年) ]
さいたま新都心のこれまで空いていた区画は、2017(H29)年1月にさいたま赤十字病院と県立小児医療センターがオープンしました。
新たにできた施設が病院では『にぎわい』どころか静穏性が求められそうです。
[ コクーン新都心 ]
片倉工業が管理・運営する新都心駅の東口に あるショッピングモール。
物販+飲食+シネコンと一般的な構成ですが、開業当初は駅に直結している点で県内でも珍しい立地でした。
片倉工業は、世界遺産となったことで有名な「富岡製糸場」の最後の所有者でもあります。